二つの世界遺産が語るもの

広島には、対照的な二つの世界遺産がある。 人類の過ちと平和への誓いを刻む「原爆ドーム」。 そして、自然への畏敬と優美な建築美を誇る「厳島神社」。 海上に立つ大鳥居は、満潮時にはまるで竜宮城のような幻想的な姿を見せる。 この二つの遺産は、破壊と創造、人間の弱さと強さを同時に教えてくれる。 平和公園の慰霊碑の前で手を合わせ、宮島の神域で心を洗う。 それは広島でしかできない特別な体験だ。

Itsukushima Shrine
夕焼けに染まる大鳥居のシルエット。

ノスタルジーと猫の町、尾道

尾道は、坂と海と猫の町だ。 迷路のような路地を登り、ふと振り返ると、尾道水道を行き交う渡船と造船所のクレーンが見える。 その懐かしい風景は、小津安二郎や大林宣彦といった巨匠たちの映画心を刺激し続けてきた。 近年では、古い空き家を再生したカフェやゲストハウスが増え、クリエイターが集まる新しい磁場が生まれている。 サイクリストの聖地「しまなみ海道」の起点としても世界的に有名だ。

Onomichi
坂道から見下ろす尾道水道の絶景。

復興の味、お好み焼き

広島のソウルフードといえば、お好み焼きだ。 戦後の焼け野原で、手に入りやすかったメリケン粉(小麦粉)を水で溶き、ネギなどを乗せて焼いた「一銭洋食」がルーツと言われる。 薄い生地の上にキャベツ、豚肉、そば、卵を重ねて焼く広島スタイルは、高度な職人技が必要。 鉄板の上でジュージューと音を立てるソースの香りは、広島の人々の活力の源だ。