活火山とともに生きる街
鹿児島市内から錦江湾を挟んでわずか4km。 そこに聳え立つ桜島は、日常的に噴火を繰り返す世界でも稀有な活火山だ。 風向きによっては街に火山灰が降るが、人々は「へ」とも思わず(鹿児島弁で「灰」のこと)、傘をさしてやり過ごす。 このたくましさと、マグマのような情熱こそが、明治維新を成し遂げた薩摩の原動力かもしれない。 名勝・仙巌園から眺める桜島の姿は、庭園の一部として計算され尽くした借景美であり、圧巻の一言。
苔と水と巨木の森、屋久島
本土(鹿児島)から南へ約60km。 海上に突如として現れるアルプスのような島、屋久島。 標高1936mの宮之浦岳を筆頭に高い山々が連なり、独自の気候帯を作り出している。 「ひと月に35日雨が降る」と言われる多雨が、深い森と美しい苔、そして樹齢数千年の屋久杉を育んだ。 もののけ姫の森のモデルとも言われる白谷雲水峡を歩けば、太古の生命の息吹に包まれる。
黒の食文化と薩摩焼酎
鹿児島の食は「黒」がキーワードだ。 黒豚、黒牛、黒さつま鶏、黒酢。 豊かな自然が育んだこれらの食材は、素材そのものの味が濃く、力強い。 そして、それらに合わせるのが、サツマイモから作られる薩摩焼酎だ。 「ダレヤメ(晩酌)」は、一日の疲れを癒やす神聖な儀式。 お湯割りで香りを立たせ、黒千代香(くろじょか)で酌み交わせば、心も体も温まる。