天平の祈り、大仏さま
東大寺の大仏殿は、世界最大級の木造建築だ。 見上げるほど巨大な盧舎那仏(大仏さま)は、疫病や災害に苦しむ人々を救うために建立された。 創建から1200年以上、幾多の戦火を乗り越えてきたその姿は、人々の祈りの強さを物語る。 二月堂から見下ろす奈良の街並みは、高い建物がなく、空がどこまでも広い。 ここには、現代が忘れた悠久の時間が流れている。
神の使い、鹿との共生
奈良公園を歩けば、当たり前のように鹿が寄ってくる。 彼らは春日大社の神使いとして、古くから大切に保護されてきた野生動物だ。 鹿せんべいをねだる愛らしい姿に癒される一方で、夕暮れ時に角笛で呼び寄せられる「鹿寄せ」の風景は幻想的ですらある。 人と動物がこれほど自然に共生している都市は、世界中を探しても稀だろう。
全山が桜に染まる吉野山
「一目千本」。 吉野山の桜は、そう形容されるほど圧倒的なスケールを誇る。 下千本、中千本、上千本、奥千本と、山麓から山頂へと開花前線が駆け上がり、全山が淡いピンク色のグラデーションに包まれる。 この桜は、修験道の開祖・役行者が植えたとされる神木だ。 ただ美しいだけでなく、厳しい修行の地としての歴史が、その風景に深みを与えている。