源泉数世界一、別府の地獄

別府鉄輪(かんなわ)地区に足を踏み入れると、マンホールの隙間や側溝からも蒸気が立ち昇り、街全体が呼吸しているかのようだ。 「地獄めぐり」と呼ばれる源泉群は、コバルトブルーの「海地獄」や真っ赤な「血の池地獄」など、まさにこの世のものとは思えない色彩を放つ。 日が沈む頃、街中の湯けむりが夕日に染まる光景は、別府でしか見られない幻想的なパノラマだ。 ひとたび湯に浸かれば、そこは極楽。心身の澱がスッと消えていく。

Panoramic view of Beppu steam at sunset
無数の湯煙が夕空に溶け込む。日本一の「おんせん県」の原風景。

朝霧の幻想、湯布院の時間

賑やかな別府とは対照的に、湯布院は静寂と洗練が支配する大人のリゾートだ。 由布岳(豊後富士)の麓に広がる田園風景の中に、隠れ家のような宿や美術館が点在する。 冷え込んだ朝、金鱗湖(きんりんこ)の水面から白い朝霧が立ち昇り、湖畔の鳥居や紅葉を包み込む。 その幽玄な美しさは、まるで水墨画の世界。 ここには、何もしない贅沢を知る大人のための、ゆっくりとした時間が流れている。

Morning mist at Lake Kinrin in Yufuin
朝霧に煙る金鱗湖。静寂の中で深呼吸したくなる場所。

石に刻まれた千年の祈り

大分は「神仏習合」発祥の地の一つであり、石造文化の宝庫でもある。 臼杵(うすき)に残る60体以上の磨崖仏(まがいぶつ)は、平安から鎌倉時代にかけて彫られた日本の至宝だ。 長い風雪に耐えながらも、その表情はあくまで穏やかで、慈愛に満ちている。 木漏れ日が苔むした石仏を照らす時、そこには千年前から変わらない静謐な祈りの空間が広がる。

Serene Usuki Stone Buddhas
森の奥に佇む国宝・臼杵石仏。その微笑みは永遠の安らぎを与える。