源泉数世界一、別府の地獄

別府に足を踏み入れると、まず驚かされるのはその「湯気」だ。 マンホールの隙間や側溝からも蒸気が立ち昇り、街全体が生きているように感じる。 「地獄めぐり」と呼ばれる7つの源泉は、コバルトブルーの「海地獄」や真っ赤な「血の池地獄」など、まさにこの世のものとは思えない光景。 しかし、ひとたび湯に浸かれば、そこは極楽。 砂蒸し、泥湯、蒸し湯など、温泉のデパートのような多様性が魅力だ。

Beppu Steam
街中に湯けむりが立ち昇る、別府の鉄輪エリア。

朝霧の幻想、湯布院の時間

賑やかな別府とは対照的に、湯布院は静寂と洗練が支配する大人のリゾートだ。 象徴的な由布岳(豊後富士)の麓に広がる田園風景と、個性豊かな美術館やギャラリー。 冬の寒い朝、金鱗湖(きんりんこ)から立ち昇る朝霧が街を包み込む光景は、幻想的のひとこと。 「何もしない贅沢」を知る人だけが味わえる、極上の時間がここには流れている。

Lake Kinrin
朝霧に煙る金鱗湖。静寂の朝。

石に刻まれた祈り、国東と臼杵

大分は「神仏習合」発祥の地の一つでもある。 国東(くにさき)半島には、神と仏が共存する独特の山岳信仰「六郷満山」の文化が色濃く残る。 また、臼杵(うすき)には、平安時代から鎌倉時代にかけて彫られた60体以上の磨崖仏(まがいぶつ)があり、その柔和な表情は国宝に指定されている。 石に込められた千年の祈りは、見る者の心に静かな平穏をもたらす。