神在月、八百万の神々の集い

旧暦10月、全国で「神無月」と呼ばれるこの時期、島根だけは「神在月(かみありづき)」となる。 全国の八百万の神々が出雲大社に集まり、来年の縁結び(人間関係、仕事、お金などあらゆるご縁)について会議を開くと言われているからだ。 巨大なしめ縄の下に立つと、ここが日本人の精神的な故郷であることを肌で感じる。 稲佐の浜に打ち寄せる波の音は、神話の時代から変わらぬリズムを刻んでいる。

Izumo Taisha
神楽殿の巨大なしめ縄は圧巻。

水の都、松江の美学

松江城の天守から城下を見渡せば、宍道湖の水面が陽光を反射して輝いている。 松平不昧公が広めた茶の湯文化が今も暮らしに根付いており、和菓子の消費量は全国でもトップクラスだ。 夕刻、宍道湖に沈む夕日は、日本の夕陽百選にも選ばれた絶景。 刻一刻と色を変える空と、湖に浮かぶ嫁ヶ島のシルエットは、言葉を失うほどに美しく、どこか哀愁を帯びている。

Matsue Castle
現存12天守の一つ、国宝・松江城。

森に眠る世界遺産、石見銀山

かつて世界の銀の3分の1を産出したとも言われる石見銀山。 しかし、ここは産業革命のような大規模開発ではなく、自然環境と共生しながら採掘が行われた稀有な鉱山遺跡だ。 間歩(まぶ)と呼ばれる坑道跡や、赤い瓦屋根が連なる大森の町並みを歩くと、往時の繁栄と人々の丁寧な暮らしぶりが伝わってくる。 今もなお、静かな森の中で歴史が呼吸しているようだ。